日本語と中国語は同じ漢字を使う言語です。だからこそ、「筆談でもなんとかなる」と思われがちです。しかし、実際には言葉は通じているのに会話が弾まない、意図が伝わらないという経験をする方が少なくありません

先日、シンガポールにお住まいの中国系学習者に日本語を教える機会がありました。そこで話題になったのが、普段日本で暮らしていると意識しない言葉の不思議についてです。実際のレッスンで飛び出した質問と、そこから見えてくる言葉の裏にある日本文化についてご紹介します。

日本語と中国語は漢字が同じ?翻訳いらずの落とし穴

中国語圏の方にとって、日本語学習の最大の武器はやはり漢字です。今回のレッスンでも、「はじめまして」を「初」という漢字を見せたときにすぐに意味がつながりました。中国語でも「初めて」という意味を持つため、日本での挨拶である「はじめまして」のことだと直感的に理解してもらえたのです。

こうしてイメージから言葉を覚えられるのは、漢字文化圏ならではの強みでしょう。しかし、漢字の意味が分かるからこそ陥りやすい落とし穴もあります。文字としての意味は同じでも、その言葉が使われる文化的背景やニュアンスが、日本と中国では大きく異なる場合があるからです。

翻訳できても会話がズレる?日本独自のタブー

その違いが顕著に表れたのが、仕事に関する会話です。日常会話において、初対面の人と話す際に「お仕事は何をされていますか」と尋ねる場面は頻繁にあります

自己紹介の延長として、相手が何をしている人なのかを知ろうとするのは自然な流れです。ここで「会社員です」と答えるまでは、日本でも海外でも大きな違いはありません。しかし、その直後に続く質問に文化の壁が現れます。

中国やシンガポールなどのビジネス文化では、相手をより深く知るために、具体的な会社名や役職、さらに「給料はいいですか」といった詳細な事まで尋ねることがあります。

これは相手への関心を示すポジティブなコミュニケーションと捉えられているからです。一方で、日本の会話ルールではどうでしょうか。

初対面でいきなり年収を尋ねることは、マナー違反とされることが多いです。日本では金銭的な話題はプライベートな領域として慎重に扱われるため、親しい間柄でない限り避けるのが一般的です。

言葉の意味は理解できていても、こうした会話のルールやタブーまでは言語学習だけでは見えてきません。直訳すれば意味は通じますが、その背景にある社会的常識の違いを知らなければ、円滑なコミュニケーションを築くことは難しくなります。生徒さんも、言葉の裏にある日本特有の距離感に驚いた様子でした。

漢字だけでは伝わらない、意外な矛盾

さらに議論が白熱したのが、「不動産」という言葉についての質問でした。生徒さんから、家や土地は売ったり買ったりするものだ、という指摘を受けました。持ち主が変わる、つまり動いているのになぜ「不動」と呼ぶのかという疑問です。

言われてみれば確かにその通りです。法律用語や経済用語としては、現金や商品などの動産に対して、土地そのものは物理的に動かせないため不動産と定義されます。しかし、売買によって所有権が動くという流動性の視点で見れば、名前と実態が矛盾しているように見えるのも無理はありません。

日本で生活していると当たり前すぎてスルーしてしまうことを、論理的に突っ込まれる。この視点のズレこそが、異文化交流や語学学習の難しさであり、同時に面白さでもあります。ただ言葉を覚えるだけでなく、なぜそう呼ぶのかという背景を考えることで、より深く日本語を理解できるようになります。

言葉と文化の通訳

単語を覚えるだけなら独学でも可能です。しかし、その言葉に込められた背景やコミュニケーションのルールまでは、辞書には載っていません。私自身、日本で暮らす日系2世として、日本の文化と海外の感覚、その両方の視点を持っています。だからこそ、日本人が無意識に使っている言葉のルールを、客観的な視点でわかりやすく言語化して伝えることができると思います。

単なる言葉の変換ではなく、文化の通訳として「なんで日本人はこう言うのだろう」という素朴な疑問を、私のレッスンで一緒に解き明かしていきましょう。言葉の背景にある文化を知れば、日本語での会話はもっと深く、楽しいものになりますよ。

カロリナ

単なる言葉の変換ではなく、文化の通訳として「なんで日本人はこう言うのだろう」という素朴な疑問を、私のレッスンで一緒に解き明かしていきましょう。言葉の背景にある文化を知れば、日本語での会話はもっと深く、楽しいものになりますよ。