急拡大する海外市場—言葉を超えたマンガの力
今や「MANGA」は世界共通語となり、その市場規模は海外で急速に拡大しています。多くの国で日本のマンガが翻訳され、熱狂的なファンを獲得していますが、この人気を支えているのは、単にストーリーの面白さだけではありません。
日本のマンガには、感情や動きを伝える独特な表現が詰まっています。この「独特のニュアンス」を正確に、そして魅力的に翻訳することが、読者を惹きつけ、市場を広げるための鍵となります。
文化と地域差の壁:スペイン語翻訳で変わるキャラクターの印象
マンガを海外に届ける際、言語だけでなく、その文化や地域ごとの違いを理解することが非常に重要です。特にスペイン語圏は、スペイン本土だけでなく中南米諸国という広大な地域にまたがるため、翻訳には細心の注意が必要です。
敬意や親愛を表現する「二人称」の違い
日本語のマンガでよく使われる「君」や「お前」といった二人称のセリフは、スペイン語では翻訳者が非常に頭を悩ませるポイントの一つです。
- スペイン本土では、親しい間柄や若い世代に「tu(トゥー)」を使います。
- 一方、中南米諸国では、「usted(ウステ)」や、アルゼンチンなどで使われる「vos(ボス)」という二人称があり、地域によって使い分けや意味合いが大きく異なります。
キャラクターが相手に「tu」を使うのか、「usted」を使うのかによって、二人の親密さ、尊敬の度合い、あるいは距離感といったニュアンスが全く変わってしまいます。物語の重要な要素であるキャラクターの関係性を忠実に再現するには、翻訳者がターゲットとする読者層の文化を理解し、最も適切な表現を選び取る必要があります。
マンガ翻訳の壁
オノマトペと感情の表現はAIの苦手分野
マンガには「ドクン」「シーン」「ゾワッ」といった、登場人物の心理状態や環境音を表現する「オノマトペ(擬音語・擬態語)」が溢れています。
AI翻訳でこれらを直訳しようとしても、その感情の強さや場面の雰囲気が伝わらず、非常に不自然な表現になってしまいます。
文化的な背景が凝縮されたセリフ
登場人物のセリフも、単なる会話の置き換えでは済みません。「先輩」「後輩」といった日本特有の人間関係を示す言葉や、「いただきます」「ごちそうさま」といった食文化に基づく言葉など、その裏にある関係性や文化的なニュアンスが伝わらなければ、物語の世界観が崩れてしまいます。
私たちの翻訳:物語の「間」と「温度」を伝える
私たちは、マンガを翻訳する際、単に言語を置き換えるのではなく、「原作者の意図と感情」を読み解き、現地の読者に最大限の感動を与えることを目指しています。
翻訳者が「間に立つ」ことで生まれる価値
- ニュアンスの微調整:キャラクターの口調や感情の機微を理解し、現地の読者に最も響く言葉(スラング、古い言い回しなど)を選びます。
- 独自の表現への置き換え:直訳が不可能なオノマトペは、そのシーンの感情を表現する「現地の読者に馴染み深い言葉」に置き換えることで、作品の力を損ないません。
私たちが「間に立たせていただく」ことで、文化的誤解なく、マンガの持つ独自のニュアンスや熱量をそのまま海を越えて届けることが可能になります。
スペイン出版社への「マンガ日本語」企業研修の取り組み
私たちは、通常の翻訳業務に留まらず、異文化理解を深めるための企業研修にも関わっています。
先日、実際にスペインの出版社様に入り、「マンガに使われる独特な日本語表現」に特化した企業研修を担当させていただきました。
現地の編集・翻訳チームの方々が「このセリフの裏にはどんな感情が?」「このオノマトペはどの単語が最適か?」といった疑問を解決できるように、綿密にスケジュールを組み、内容を精査してお伝えしました。オンラインでの開催でしたが、現地の皆様に大変喜んでいただけたことは、私たちにとって大きな喜びとなりました。
マンガの力を最大限に引き出すために
マンガは、日本の文化を世界に発信する強力なメディアです。その魅力を最大限に引き出し、より多くの読者に感動を届けるためには、言語だけでなく文化や文脈、そして感情を理解できる人間の力が不可欠です。
海外展開を検討されている出版社様、作家様へ。ぜひ、作品の「魂」を伝える翻訳と、翻訳チームの育成を私たちにお任せください。