取引の最終局面、報告の場で気づいた小さな違和感
先日、ある日本企業様と海外企業様との大切な契約締結のサポートをさせていただきました。
商談自体は順調に進み、あとは最終的な契約書の内容を両者に確認・報告する段階でした。両社の担当者様も安堵の表情を見せていたのですが、私が契約書の「パーセント(%)」に関する記述を訳し、内容を説明している際、小さな、しかし非常に重要な違和感を覚えました。
それは、お互いの国の商習慣や表現の違いから、日本側と海外側で「示しているパーセンテージ」の認識が決定的にズレていたことです。
契約の肝で発生した認識のずれ
金額にも関わる「パーセント」の落とし穴
今回のケースでは、そのパーセンテージが、取引全体の金額を大きく左右する重要な条件に関わっていました。
商談中は大枠の合意で進んでいたため、お互いの国の担当者様は、自国語の契約書を見ながら「これで合意だ」と信じ込んでいます。もちろん、言葉そのものに間違いはありません。しかし、その「パーセント」という言葉や記号が、両国で何を意味するのか、という「文脈の認識」が完全に異なっていたのです。
もし、私の報告時に気づかずそのままサインされていたら、後日、取引開始後に「聞いていた金額と違う」「契約違反だ」といった深刻なトラブルに発展し、最悪の場合、取引自体が破綻する可能性すらありました。
通訳の役割:「言葉」ではなく「誤解」を防ぐこと
この状況で、私はすぐに契約書の説明を一時中断し、それぞれの国の商慣習や文脈に基づいた認識の違いを丁寧に説明しました。
- 日本側の認識:「このパーセントは、全体に対するこの部分を指しています」
- 海外側の認識:「私たちの国では、この表現だと全体を100%とした場合を示します」
通訳が「文書内容の最終確認」という段階で立ち止まり、この「認識のズレ」を指摘し、正しい理解を促したことで、両社は無事に誤解を解消し、真に合意した内容で契約を締結することができました。
通訳は「トラブル予防」の専門家です
私たちの仕事は、単に会話を訳したり、文書を翻訳したりすることだけではありません。それは、「ビジネスの基盤となる信頼関係と契約の安全を守ること」だと考えています。
AI翻訳や単純な翻訳者では気づかない、このような文化的な認識のズレや商習慣の違いまで読み取り、未然にトラブルを防ぐことこそが、私たち通訳翻訳の最も大きな役割なのです。
安心して海外との取引を進めていただくために
海外企業との大切な取引において、金額や責任に関わる認識のズレは絶対に避けたいですよね。
当社では、長年の経験から得た「異文化理解力」と「商習慣の知識」をもって、お客様のビジネスの成功をサポートいたします。大切な契約の最終確認の際には、ぜひ私たちにご相談ください。